良い睡眠を取るには、日中の過ごし方が大事!ハーバード大学客員教授の根来先生に聞く「睡眠の質をあげる方法」

根来秀行(ねごろ ひでゆき)

東京都生まれ。医師、医学博士。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、信州大学特任教授、高野山大学評議員・客員教授、事業構想大学院大学教授。
専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、最先端の臨床、研究、医学教育の分野で国際的に活躍中。2012年に急性腎不全の仕組みの一部を解明し、『PNAS(米国科学アカデミー紀要)』に発表、NHKなどのテレビ、新聞各紙はじめ、各種メディアでトップニュースとして報道される。2021年コロナ治療薬のメカニズムを発見し、英医学誌に発表、国際的なニュースとなる。現在、臨床治験も進行中。『ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法』(KADOKAWA)、『毛細血管は増やすが勝ち!』(集英社)、『老化は予防できる、治療できる』(ワニ・プラス)、『ハーバード&ソルボンヌ大学ドクターが教える!超休息法』(徳間書店)、『腎トレウォーキング』(青春出版社)などベストセラー著書多数。
世界一受けたい授業(日本テレビ)、ひるおび(TBS)、あさイチ(NHK)、チコちゃんに叱られる(NHK)ほか、テレビ、ラジオ出演多数。

みなさんは自分の睡眠をどれくらい大切にしていますか。

睡眠は「生理的三大欲求」のひとつで、健康維持に欠かせない活動です。しかし、食事や運動には気を配っていても、睡眠については、どう管理したら良いかわからない方もいるのではないでしょうか。

実際、OECDの調査では日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、調査対象33か国の中で最も短いことがわかっています。

この記事では、根来先生にお伺いした睡眠不足による健康被害と、その対策となる「より良い睡眠法」についてわかりやすく解説します。睡眠の質を高めるヒントを、ぜひ参考にしてください。

目次

睡眠のメカニズム

――睡眠を規定する因子は?

先生:私たちの身体は、時計遺伝子によって基本的なリズムがつくられています。このリズムをサーカディアンリズム(概日リズム)といい、約24時間周期で血圧、心拍数、自律神経、ホルモンなど、全身の働きを調整しています。

例えば、健康的なサーカディアンリズムの場合、自律神経の働きとしては、日中は交感神経の活動モード、夜は副交感神経による休息モードへスムーズに移行します。また、ホルモンの働きとしては、朝起きた時間から約15時間後よりメラトニンが増えて、眠気を誘発し、約20時間後にはコルチゾールが分泌され、目覚めを促します。

つまり、時計遺伝子がサーカディアンリズム、睡眠リズムを作り、そのリズムが自律神経とホルモンを調整することで、私たちは規則正しく眠ったり目覚めたりできるという仕組みになっているのです。

良い睡眠に不可欠な習慣

――質の良い睡眠のために、日中から意識すべきことは?

先生:ポイントは副交感神経が働く夜に向けた“朝~昼~夜”の仕込みです。具体的には、以下を意識すると良いでしょう。

  • 朝:起床後に2,500ルクス以上の光を浴び、体内時計をリセット。朝食は起床1時間以内に。
  • 日中:牛乳やバナナなどトリプトファンを含む食品を取り、リズム運動や呼吸法でセロトニン分泌を促す(呼吸法に関しては後述)また、できるだけ同じ時間に軽い運動や呼吸法を行い、体内時計を調整しつつ、自律神経のバランスを整える。
  • 夜:就寝前の激しめの運動やブルーライトは避け、照明を落としてゆっくり過ごす。メラトニンを保ち、副交感神経を優位にする環境づくりが鍵。

現代人の「睡眠の質が悪い」主因

――今の日本人はなぜ眠りが浅くなりがちなのでしょうか?

先生:一つは、夜遅くにスマホやPCを使うことが多いためです。夜遅くにスマホやPCを使うと、ブルーライトなど、光によってメラトニンが抑えられ、寝つきが悪くなり体内時計もずれてしまいます。これは眠りを浅くします。また、現代人は様々なストレスが多く、交感神経が高めのまま睡眠の時間を迎えがちです。これも眠りを浅くします。

メラトニンが不足し、交感神経優位な状態で睡眠をとると眠りの質が低下してしまい、結果的に睡眠中の脳や身体の回復、再生が不十分になり、更に体内時計のずれを招きます。

体内時計がずれ、睡眠の質が低下した生活を続けると、「社会的時差ボケ」のような状態になることもあります。若い世代では不登校や集中力低下に結びつくケースも見られます。

「社会的時差ボケ」への対策

――夜更かしや休日の寝だめをリセットするには?

先生:まず起床時刻をそろえること。休日も平日と同じ、ずれても**±1時間以内**に。光・食事・運動のリズムを整えるだけで、ズレた時計は戻りやすくなります。また、自律神経のバランスを整えるために、是非呼吸法を応用して頂きたいです。

  • 寝不足は“長く寝て取り返す”より、その夜を早く寝るのが正解。
  • 1日1万歩を目安に、日中は体を動かす。
  • 毎朝の朝食で体内時計に“朝”を知らせる。
  • 呼吸法を活用し、日中に適宜副交感神経を高める。

海外渡航・時差ボケの整え方

――海外に行った時の時差ボケも辛いのですが、対処方法はあるでしょうか?

先生:方法の一つとして、到着15時間前からの軽い絶食現地到着後に食事で体内時計を切り替えるやり方があります(体調に合わせ無理のない範囲で)。

また、時差ボケ対策に限らず、日常でも重要な点になりますが、入浴は就寝約1時間前に終えるタイミングが理想的です。その後約1時間かけて、深部体温が下がるタイミングで寝るとスムーズに入眠できます。また、特に睡眠前は、「4-4-8呼吸法」(腹式呼吸で、鼻から4秒吸う→4秒止める→8秒吐く)をゆったりと行うことで、副交感神経を優位にすることが出来、より良い睡眠につながります。

夜中に目が覚めても強い光やスマホは見ないようにしてください。メラトニンが抑制され、余計に眠れなくなります。部屋は暗くしたまま、上記の448呼吸法や瞑想などを行い、再入眠するように取り組みましょう。

睡眠不足・不規則生活が続くと?

――長期的な影響はありますか。

先生:若い頃は目立ちにくくても、加齢で再生力が落ちると高血圧・糖尿病・循環器疾患などのリスクが上がります。更年期以降はホルモン変化で自律神経が不安定になりやすいので、睡眠リズムの維持が予防に直結します。睡眠時間は7時間を目安にしてください。

そのため、若いころから、睡眠の質の改善には取り組んでおけると良いですね。

to clinic shibuya(トゥークリニックシブヤ) の睡眠治療

――クリニックではどんなサポートを?

先生:僕がハーバード大学にて長年かけて独自に開発してきたデバイスなどを活用し、24時間、自律神経や睡眠状態を計測し、そこで得られた科学的データに基づいて、体内時計、サーカディアンリズム、睡眠の分析を行います。睡眠や自律神経バランスを分かりやすく「見える化」し、その情報に基づいて、生活リズムや呼吸法、運動法、食事など、多様な改善策を個々に合わせてオーダーメイド的に提案します。

それ以外にも、必要に応じてサプリメントや点滴も活用し、薬に頼らない根本的な睡眠改善を目指しています。

メッセージ

先生:良い睡眠は朝の光・日中の運動・呼吸法、食事のタイミング・就寝前の環境、そしてスマホとの付き合い方など、「日中の過ごし方」から生まれます。若い世代でも、不規則な生活は将来の健康リスクにつながりえます。だからこそ、早めの、正しい行動変容、軌道修正が必要です。

to clinic shibuya では、計測に基づくオーダーメイド支援で「本物の睡眠改善」をご一緒します。

睡眠外来


※持病のある方、妊娠中の方、食事制限が必要な方は、自己流で無理をせず医師にご相談ください。

経歴
1996年-2000年
大学院時代、睡眠ホルモンの一つであるプロスタグランジンD2や細胞内転写因子、遺伝子治療について研究。後に、ハーバード大学に招聘されるきっかけとなる。
根来教授の研究により、プロスタグランジンD2の細胞内メカニズムが解明され、睡眠に関わる役割とともに、炎症を抑制し、動脈硬化を防ぐ役割を果たしていることが明らかになった。
2000年 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。博士号取得。
2004年 東京大学医学部第二内科講師、東京大学大学院新領域創成科学科講師
2005年産業医資格取得後、東京大学の教職員や学生ができるだけ病気にならないようにし、パフォーマンスを上げるための東京大学柏キャンパスの健康管理センターを立ち上げる。
2006年ハーバード大学の客員准教授になり、ボストンに拠点を移す。同時期にメジャーリーグレッドソックスの選手たちにパフォーマンスアップに関するアドバイスをするようになる。それともに、健康な人のパフォーマンスをいかに整え上げていくかというコンディショニング分野での活動も行う。
細胞研究から抗加齢医学、睡眠医学へ
細胞内のシグナリングの研究を行う中で、アポトーシス(細胞の自然死)の研究に取り組み、そのメカニズムを発見。健康な人のパフォーマンスを上げるという視点と合わせて、老化をどう防いでいくかというアンチエイジング系の研究も行う。
2012年-急性腎不全の発症メカニズムの一端を解明
2023年1月14日 世界一受けたい授業出演
「新年から始めるべき新生活習慣!どっちが老けやすい?老けにくい?」