
男性ホルモンの一つ、テストステロンが減少すると、筋肉量や骨量が減少し、体脂肪増加や性機能障害などが見られるようになります。この変化は年齢とは関係なく、20代・30代であってもテストステロンが減少すると生じる点に注意が必要です。テストステロンが減少する原因や増やし方を解説します。
目次
テストステロンの減少が男性更年期を招く

テストステロンは主に精巣でつくられるホルモンです。男性ホルモンの一つであるテストステロンが減少すると、男性更年期と呼ばれる不調に陥ることがあります。例えば、次のような症状が見られるときは、男性更年期の可能性があるでしょう。
- 筋力低下
- ほてり
- 抑うつ
- イライラ
- 不眠
- 性欲低下
女性の更年期は閉経前後に訪れます。個人差はあるものの50歳前後に閉経を迎える方が多いため、閉経の前後5年間程度(45~55歳ごろ)は女性ホルモンが急激に減少し、ホルモンバランスが大きく乱れ、ほてりやイライラといった更年期障害が見られやすくなります。
一方、男性には月経がないため、女性のように大きくホルモンバランスが崩れるきっかけはありません。男性ホルモン(テストステロン)は加齢により徐々に減りますが、減り方には個人差があり、高齢でも若い頃とほとんどテストステロンの分泌量が変わらない方もいれば、急激に減少してしまう方もいます。
20代、30代の男性はテストステロンの分泌量がピークといえるほど多い傾向にありますが、40代以降になると差が顕著になります。そのため、50歳前後のみ更年期になる女性とは異なり、男性は幅広い年代で更年期症状が現れる可能性があるのです。
参考:Christopher A Muir et al., “Approach to the Patient: Low Testosterone Concentrations in Men With Obesity Open Access,” The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism (2025)
参考:European Association of Urology”Sexual and Reproductive Health”3. MALE HYPOGONADISM
テストステロンが減少する原因

男性更年期はテストステロンの分泌量が減少することで起こります。分泌量を減少させる主な原因は次の3つです。
- 加齢
- ストレス
- 糖尿病や肥満などの生活習慣病
各原因について、ポイントを見ていきましょう。
加齢
テストステロンの分泌量は20~30代でピークを迎え、以後は加齢とともに穏やかに減少していきます。しかし、テストステロンの分泌量には個人差があり、年齢と共に減少する方もいれば、年齢を重ねてもあまり減らない方もいます。
参考:European Association of Urology”Sexual and Reproductive Health”3. MALE HYPOGONADISM
ストレス
テストステロンの分泌量を減らす大きな要因の一つはストレスです。慢性的に心理的・身体的ストレスを受けると、テストステロンの分泌量が低下しやすくなります。
テストステロンは主に精巣でつくられるホルモンです。しかし、精巣で自動的につくられているのではなく、脳の下垂体が「黄体形成ホルモン」を分泌し、精巣にテストステロンをつくるように指令を出しているのです。
強いストレスを受けると、脳の視床下部から「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」が分泌されます。副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンはコルチゾールを増加させる一方で「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」の分泌を抑制し、黄体形成ホルモンの分泌も抑制する働きをするホルモンです。分泌されるとテストステロンの分泌量が減り、男性更年期障害の症状が表れやすくなってしまいます。
参考:堀江重郎 Ⅰ.病態解明・診断・治療 13.男性更年期障害(LOH症候群)日本内科学会雑誌第102巻第4号:914~921,2013
参考:Ngala Elvis Mbiydzenyuy et al., “Stress, hypothalamic-pituitary-adrenal axis, hypothalamic-pituitary-gonadal axis, and aggression,” Metabolic Brain Disease (2024)
参考:D. C. Cumming et al., “Acute Suppression of Circulating Testosterone Levels by Cortisol in Men Get access Arrow,” The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism (1983)
参考:Safir Ullah Khan et al., “Stress Induced Cortisol Release Depresses The Secretion of Testosterone in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus,” Clin Med Insights Endocrinol Diabetes (2023)
肥満や睡眠障害、生活習慣病
肥満や睡眠障害、生活習慣病も、テストステロンの分泌量を減少させるという報告があります。例えば、肥満になるとテストステロンは脂肪組織内でエストロゲンに変換され、脳の下垂体に作用し、黄体形成ホルモンの分泌量を減らすことがあります。
黄体形成ホルモンは、精巣にテストステロンをつくるように指令するホルモンです。黄体形成ホルモンの分泌量が減少することで、テストステロンがつくられにくくなり、分泌量も減少しやすくなります。
睡眠におけるトラブルもテストステロンの分泌量と無関係ではありません。例えば、年齢に関わらず短時間睡眠は、テストステロンの分泌量低下を招く原因となることが知られています。また、睡眠時無呼吸症候群も同様にテストステロンの分泌量低下を引き起こすことがあります。
生活習慣病により「慢性炎症」が起こりやすくなる点にも注意が必要です。慢性炎症とは体内で長期間続く炎症反応のことです。慢性炎症が起こると脳の下垂体機能が抑制され、テストステロンをつくるようにという指令がさらに精巣に届きにくくなります。
参考:Yoshihiro Ikehata et al., “Body composition and testosterone in men: a Mendelian randomization study,” Frontiers in Endocrinology (2023)
参考:Chengyang Jiang et al., “New evidence for the effect of type 2 diabetes and glycemic traits on testosterone levels: a two-sample Mendelian randomization study,” Front Endocrinol (Lausanne) (2023
参考:Sandeep Dhindsa et al., “Hypogonadotropic Hypogonadism in Men With Diabesity,” Diabetes Care (2018)
参考:Christopher A Muir et al., “Approach to the Patient: Low Testosterone Concentrations in Men With Obesity Open Access,” The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism (2025)
参考:Georgia Colleluori et al., “Aromatase Inhibitors Plus Weight Loss Improves the Hormonal Profile of Obese Hypogonadal Men Without Causing Major Side Effects,” Endocrinology of Aging (2020)
参考:Giovanni Corona et al., “Body weight loss reverts obesity-associated hypogonadotropic hypogonadism: a systematic review and meta-analysis,” Eur J Endocrinol (2013)
参考:Rachel Leproult et al., “Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy Men,” JAMA (2011)
テストステロンを増やす方法

男性更年期障害を回避し、気力・体力ともに充実した生活を送るためにも、テストステロンの増やし方を理解しておくことが必要です。次の方法に注意して日常生活を送ると、テストステロンの分泌量が減りにくく、男性更年期のさまざまな症状を回避しやすくなります。
- 適度な運動習慣を身に付ける
- 食事内容を見直す
- 緊張感や刺激のある生活を送る
- ストレスを適度に解消する
- 医療機関を受診する
各方法について見ていきましょう。
適度な運動習慣を身に付ける
筋肉に刺激を与えるとテストステロンの分泌量が増えることが報告されています。また、筋トレだけでなく、ジョギングやスイミングといった有酸素運動によっても、テストステロンの増加を図れる可能性があります。
ただし、いずれの運動も「適度」であることが重要です。長時間の運動など、過度なトレーニングはかえって身体的なストレスとなり、テストステロン値を低下させる可能性も指摘されているため注意しましょう。
なお、運動は肥満や生活習慣病の予防のためにも必要です。肥満や生活習慣病はテストステロンの分泌量を減らす原因にもなるため、適度な運動習慣を身に付けて、健康を保ちましょう。
食事内容を見直す
食事もテストステロンの分泌量に影響を及ぼす要素です。特に次の栄養素は、意識的に摂取するようにしましょう。
- タンパク質
- 亜鉛
- ビタミンD
- 食物繊維
タンパク質や亜鉛、ビタミンDはテストステロンの不足に効くといわれています。例えば、魚介類にはいずれの栄養素も豊富に含まれています。肉より魚を選ぶ、週に何度か魚を食べるなど、意識的に摂取するのも良いでしょう。
また、食物繊維を摂取し、お腹の調子を整えることにも留意する必要があります。腸活が健康増進につながり、それがテストステロンを含むホルモンの正常な分泌を期待できます。キムチやヨーグルトといった発酵食品も合わせて食べると、より腸内環境が整いやすくなるでしょう。
腸内環境を整えることは、テストステロンを増やすだけでなく、免疫力が高まり、さまざまな病気の予防にもつながることが近年の研究でわかってきました。活力にあふれた健康な生活を維持するためにも腸活を始めてみてはいかがでしょうか。
テストステロンを増やすためにも、次の4点は避けるほうがよいでしょう。
- 加工食品や穀類・豆類の食べすぎ
- 極端な糖質制限ダイエット
- アルコールの大量摂取・慢性的摂取
- 特定の食品ばかり食べる偏った食生活
加工食品に含まれることが多い無機リンや穀類・豆類に含まれるフィチン酸は、亜鉛の吸収を阻害することがあります。テストステロンを増やす亜鉛を効率よく吸収するためにも、加工食品の食べすぎは避けるようにしましょう。また、肥満を解消することはテストステロンの分泌量を増やすために重要な要素ですが、極端な糖質制限はテストステロンを減らす原因となるため注意が必要です。
特定の食品ばかり食べる生活もおすすめできません。栄養バランスのよい食事を続けることで適正体重に管理しやすくなり、健康増進だけでなく、テストステロンの分泌量の増加も期待できます。
参考:熊谷 仁「成人肥満男性における生活習慣改善がテストステロンおよび中心血圧に及ぼす影響」
参考:Ali Fallah et al., “Zinc is an Essential Element for Male Fertility: A Review of Zn Roles in Men’s Health, Germination, Sperm Quality, and Fertilization,” J Reprod Infertil (2018)
参考:S Pilz et al., “Effect of vitamin D supplementation on testosterone levels in men,” Horm Metab Res. (2011)
参考:Elisabeth Lerchbaum et al., “Vitamin D and Testosterone in Healthy Men: A Randomized Controlled Trial,” The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism (2017)
参考:Cennikon Pakpahan et al., “Potential relationship of the gut microbiome with testosterone level in men: a systematic review,” PeerJ (2025)
参考:Kyungmi Koh et al., “Relationship between Alcohol Consumption and Testosterone Deficiency according to Facial Flushes among Middle-Aged and Older Korean Men,” Korean J Fam Med. (2022)
参考:Stephen James Smith et al., “The effects of alcohol on testosterone synthesis in men: a review,” Expert Rev Endocrinol Metab. (2023)
参考:Rosalind S Gibson et al., “Implications of phytate in plant-based foods for iron and zinc bioavailability, setting dietary requirements, and formulating programs and policies,” Nutrition Reviews (2018)
ストレスを適度に解消する
テストステロンを減らす原因の一つはストレスともいわれています。ストレスを溜めないためにも、瞑想などを生活に取り入れ、普段から適度に解消する習慣を身に付けておきましょう。
また、自分が本当に楽しいと感じることをしているときは、ストレスを感じにくくなりやすいといわれています。気の置けない友人と会う時間を設けたり、反対に、気が重くなる集まりは参加しないようにしたりするのも一つの方法です。
参考:Yaxin Fan et al., “Salivary testosterone and cortisol response in acute stress modulated by seven sessions of mindfulness meditation in young males,” National Library of Medicine (2024)
医療機関を受診する
男性更年期障害を扱う医療機関を受診することも検討できます。泌尿器科の中には、男性更年期障害の治療を実施していることがあります。
男性更年期障害の治療は、原則として保険適用です。しかし、「疲れやすい」「イライラする」などの更年期障害特有の症状が見られるときでも、ホルモン値(遊離型テストステロン値)によっては更年期障害とは判断されず、保険適用の基準を満たさないことがあります。
保険適用の基準を満たさないときは、自由診療を検討してみましょう。テストステロン補充療法により、更年期特有の症状の緩和を図れることがあります。
また、基準を満たすときであっても、自由診療を検討できるでしょう。保険適用では利用できる薬剤や用量・用法が限られているため、期待するような効果を得られないことがありますが、自由診療なら薬剤や用量などの選択肢が広くなり、個人に合わせた治療を受けやすくなります。ただし、自由診療は公的医療保険が適用されないため全額自己負担となる点や、治療には副作用のリスクも伴う点を理解し、医師と十分に相談することが重要です。
なお、自由診療では医療機関によって費用が異なる点に注意が必要です。詳細な料金については、各クリニックにご確認ください。自由診療専門のクリニックであるto clinic shibuya(トゥークリニックシブヤ)のテストステロン補充療法の料金は、こちらからご確認いただけます。
どのクリニックに相談するか迷ったときは、次の3つのポイントに注目してみましょう。
- 多様な治療方法
- 丁寧なカウンセリング
- 定期的なフォローアップ
各ポイントを解説します。
クリニックを選ぶポイント1.多様な治療方法
治療方法には合う合わないがあり、効果も個人差があります。多様な治療方法を実施しているクリニックなら、ご自身に合う治療方法が見つかりやすくなるでしょう。治療方法や取り扱う薬剤の種類の多さなども、受診する前に確認しておくことが大切です。
クリニックを選ぶポイント2.丁寧なカウンセリング
治療方法や進め方に正解はありません。希望や症状を医師が正確に把握し、一人ひとりに合わせて治療計画をつくることが必要です。
個人の希望や症状を把握するには、医師による丁寧なカウンセリングが欠かせません。納得できるまで話し合い、医師と一緒に二人三脚で治療計画を立てられるクリニックを選びましょう。
クリニックを選ぶポイント3.定期的なフォローアップ
「テストステロンを増やしたいなら、補充すればよい」という簡単なものではありません。テストステロンには抑うつ状態や生活習慣病を予防する効果も期待できますが、前立腺がんに罹患している場合はテストステロンの投与により疾患が進行するなどのリスクもあるため、治療開始前に丁寧に検査を実施することが必要です。
また、テストステロンは、1回補充すれば完了というものでもありません。治療が長期間にわたることもあるため、定期的にカウンセリングや検査を実施し、適時、治療計画を調整することが求められます。クリニックを選ぶときは、治療前検査と定期的なフォローアップを受けられるかどうかも確認しておきましょう。
テストステロンを増加させるメリット

テストステロンを増加させることで、さまざまなメリットを得られることがあります。イライラや性欲低下といった男性更年期の諸症状を感じていない方も、テストステロンを増やす生活を心がけてみてはいかがでしょうか。
生活習慣病やがんの罹患リスクを低下させる
テストステロンが減少すると、脂肪が蓄積しやすくなり、肥満や生活習慣病のリスクが高まる可能性があると報告されています。また、免疫力にも影響を及ぼし、がんに罹患しやすくなることも研究により明らかになってきています。
生活習慣病やがんの罹患リスクを低下させるためにも、テストステロンを増やす生活や治療に注目できるかもしれません。
参考:金沢大学「世界で初めて明らかに!男性のがん悪液質に男性ホルモン補充療法が有効」
認知症の予防効果も期待される
テストステロンは主に精巣でつくられていますが、記憶を司る海馬でもつくられています。そのため、テストステロンの減少と認知症の発症リスクには何らかの関連があることが注目されてきました。近年では、テストステロンを増やすことで認知症予防につなげる研究なども行われています。
参考:九州大学「テストステロンがアルツハイマー型認知症のリスクを低減~性差が認知症リスクを決める?テストステロンとオートファジーの関係を解明~」
活力にあふれた生活を送れる
テストステロンの増加は活力・気力の維持に役立つという報告もあります。生き生きと活力にあふれた暮らしを楽しむためにも、運動や食事などに注意し、テストステロンを増やす生活を送るようにしましょう。
参考:堀江重郎「男性の抗加齢はテストステロンにあり」Clinical and Functional Nutriology Vol.4 No.4, 181-185
性欲向上・勃起不全の改善が期待できる
テストステロンの増加が、性欲や勃起機能に影響する可能性があることが指摘されています。性欲の減退や勃起不全について悩んでいるときも、テストステロンを増やす生活や治療を検討できるかもしれません。
骨や筋肉の増強に役立つ
骨量や筋肉量の維持とテストステロンの関連も報告されています。若々しく健康な身体を保つためにも、身体の基礎となる骨や筋肉の増強に役立つとされるテストステロンに注目できるでしょう。
参考:堀江重郎 Ⅰ.病態解明・診断・治療 13.男性更年期障害(LOH症候群)日本内科学会雑誌第102巻第4号:914~921,2013
不調の原因はテストステロン不足かも!クリニックで相談しよう

「最近、疲れやすくなった」「筋肉がつきにくくなった」「性欲が低下した」といった不調を感じている方は、もしかしたらテストステロン不足が原因かもしれません。食事や運動習慣を見直し、テストステロンの増加を図ってみてはいかがでしょうか。
また、クリニックで相談するのも一つの方法です。テストステロン不足が気になるときは、to clinic shibuya(トゥークリニックシブヤ)にご相談ください。当院は自由診療を専門としており、丁寧なカウンセリングと検査、エビデンスに基づき、副作用のリスクも考慮しつつ医師が患者さんに合わせた治療計画を提案します。また、治療中も繰り返し計画を見直し、二人三脚で治療を進める点も特徴です。ご不明な点があれば、お気軽にお尋ねください。
to clinic shibuya(トゥークリニックシブヤ)
安全性と副作用
テストステロン補充療法は、適切な管理下で行えば安全性の高い治療法です。しかし、すべての医療行為と同様に、潜在的な副作用があります。to clinic shibuyaでは、これらのリスクを最小限に抑えるため、以下の対策を講じています。
- 厳密な適応判断
- 定期的なモニタリング
- 用量の適切な調整
- リスクヘッジのためのケア剤の適切な使用
主な注意点
- 前立腺がんの既往がある方は慎重な判断が必要
- 睡眠時無呼吸症候群がある方は症状が悪化する可能性あり
- 心血管疾患のリスクがある方は注意深いモニタリングが必要
参考:テストステロンに関する価格表
- 自費診療初診料 5,500円
- メンズヘルス初回採血 22,000円
- メンズヘルス採血(一般) 2,200円
- メンズヘルス採血(ホルモンのみ) 5,500円