テストステロン補充療法(男性ホルモン注射)とは?期待できる効果や注意点

テストステロン補充療法とは男性更年期障害の治療方法のひとつで、男性ホルモン治療とも呼ばれます。1930年頃、テストステロンの人工合成が可能になり、男性ホルモンの低下が引き起こす種々の症状に対して用いられてきました。期待できる効果や治療時の注意点、クリニックの選び方を解説します。

目次

テストステロン補充療法(男性ホルモン注射)とは?

テストステロン補充療法とは、男性ホルモンのひとつであるテストステロンを体内に補充する治療法です。そもそもテストステロンとは精巣や筋肉などで産生されるホルモンで、血中ではアルブミン結合型や遊離型などのいくつかの形に分かれて存在しています。

テストステロンは総じて加齢により減少しますが、その中でも遊離テストステロンは年齢の影響を受けやすく、20~30代をピークに減少することが知られています。また、ストレスや過剰な飲酒、運動不足なども、テストステロンの分泌量を減少させる要因の一つです。

テストステロンの分泌量が減少すると、体力や性欲の低下、集中力の欠如といった症状が見られるようになることがあります。テストステロン補充療法により不足するテストステロンを補い、分泌量低下によって生じる不調を改善する方法も検討できるでしょう。

男性更年期障害の治療方法のひとつ

加齢によりテストステロンなどの男性ホルモンの分泌量が減少し、さまざまな不調が見られることを「男性更年期障害」と呼びます。人工的に男性ホルモンを補うテストステロン補充療法は、男性更年期障害の治療方法としても用いられることがあります。

なお、テストステロンの平均分泌量は加齢とともに減少しますが、個人差が大きい点に注意が必要です。30代、40代になってから急激に分泌量が減少する方もいれば、高齢になっても若い頃と分泌量がほとんど変わらない方もいます。加齢により急激に分泌量が減る場合は、不調を感じやすいため、男性更年期障害の治療も検討できるでしょう。

また、テストステロンは、筋肉量や筋力の維持、内臓脂肪のコントロールに関与することが知られています。これらの身体的変化に対し、医師の診断のもとでテストステロン補充療法が治療法の一つとして実施されることがあります。

参考:堀江重郎.1.病態解明・診断・治療 13.男性更年期障害(LOH症候群).日本内科学会雑誌 第102巻 第4号:914~921,2013

内服薬や外用薬による治療も選択可能

テストステロン補充療法は「男性ホルモン注射」とも呼ばれることからもわかるように、注射で実施されることが一般的です。しかし、一部のクリニックでは、内服薬や外用薬でテストステロン補充療法を受けられます。

注射が苦手な方や抵抗を感じる方は、内服薬や外用薬に対応しているクリニックを探してみましょう。

テストステロン補充療法(男性ホルモン注射)により改善を期待できる症状

テストステロン補充療法を受けることで、男性ホルモンの減少により生じるさまざまな症状の改善を期待できます。主な症状を紹介します。

疲労感

男性更年期障害の代表的な症状のひとつに、疲労感があります。疲れやすくなった、疲れがなかなか回復しないといった症状が見られるときは、クリニックに相談し、テストステロン補充療法を検討できるかもしれません。

多汗・ほてり・めまい

運動をしたわけでもないのに汗をかく、ほてりやすくなった、めまいがするといった症状も、男性更年期障害ではよく見られます。また、頭痛や耳鳴りを感じるケースもあります。

筋力低下

テストステロンには、筋肉の成長と維持を促進する役割もあります。

分泌量が減少すると、筋肉がつきにくくなる一方で、脂肪がつきやすくなります。生活や運動習慣が変わっていないのに身体のたるみを感じるときは、もしかしたらテストステロンの分泌量が減少しているのかもしれません。

イライラ・不安感・無気力

男性ホルモンの分泌量が減少すると、イライラや不安感、無気力を感じやすくなる傾向があります。テストステロンを補充してホルモンバランスを整えることで、精神的な不調の軽減が期待される場合もあります。

「意欲が湧かない」「集中力が切れやすい」といった漠然とした不調も、男性ホルモンの減少が一因となっているのかもしれません。無気力な状態を改善し、仕事や趣味に対して前向きに取り組むためにも、一度医師に相談してみましょう。

性欲減退・勃起障害(ED)

テストステロンの分泌量が減少すると、性欲減退や勃起障害(ED)の症状が表れるケースもあります。パートナーとの関係にも影響が生じることもあるため、クリニックで医師に相談してみることも検討できます。

テストステロン補充療法(男性ホルモン注射)の注意点

男性ホルモンの減少による不調の改善を目指せるテストステロン補充療法ですが、いくつか注意するポイントもあります。治療を開始する前に理解しておきたいポイントを紹介します。

治療を受けられないことがある

現在、治療中の病気や既往歴によっては、テストステロン補充療法を受けられない場合があります。例えば、乳がんや前立腺がん、睡眠時無呼吸症候群、うっ血性心不全などに罹患している場合などは、テストステロン補充療法の実施が難しくなることもあります。テストステロン補充療法を受ける前に、医師に病歴を伝え、治療可否を判断してもらいましょう。

また、将来的に子どもを持ちたいと考えている場合も、医師に相談の上、慎重に検討することが必要です。テストステロン補充療法を繰り返すことで無精子状態になる恐れがあるため、次のような対策を実施することもあります。

  • テストステロン補充療法を実施する期間を制限する
  • 一定の間隔を空けてテストステロン補充療法を実施する
  • 内服薬を併用する

適切な対策は個々のケースによって異なります。気になる事柄や疑問は、治療実施前に医師に率直に話して解決しておきましょう。

自費の場合は一定の費用がかかる

テストステロン補充療法は、医療保険が適用されるケースと、保険が適用されない自費診療のケースがあります。なお、当院では保険適用のテストステロン補充療法は行っておりません。

また、テストステロン補充療法は、2~4週間に一度のペースで少なくとも3ヶ月間は継続することが一般的です。治療のたびに費用が発生するため、負担に感じる方もいるでしょう。

保険適用の基準

以下の条件を満たし、なおかつ特定の薬剤を規定された頻度で処方する場合は、テストステロン補充療法による男性更年期障害の治療に医療保険が適用されることがあります。

  • 40歳以上の男性
  • 男性更年期障害の問診表(AMSスコア)が治療基準を満たす
  • 総テストステロン値(午前中)が250ng/dl未満※
  • 遊離テストステロン値が7.5pg/ml未満※

※数値は治療の必要性を判断する上での必須項目ではなく、あくまでも男性更年期障害の症状や徴候をベースにテストステロン補充療法を実施できるか判断されます。

自費診療となる場合

次のいずれかに該当する場合には、医療保険が適用されず、自費診療となります。

  • 男性更年期障害の診断基準を満たさない
  • 保険対象となる薬剤を用いないでテストステロン補充療法を実施する
  • 使用する医薬品の用量・頻度が保険適用の基準を満たさない
  • 保険適用のテストステロン補充療法に対応していないクリニックで治療を受ける

男性更年期障害の診断基準を数値上は満たさない場合でも、医師が診察の結果、治療が必要と判断した方の心身の不調に対して、自費診療で治療を行うことがあります。

また、薬剤や用法の選択肢が広がる点も、自費診療の特徴です。自費診療では、保険適用外の薬剤を用いたり治療頻度を変更したりするなど、治療の選択肢が広がる場合があります。より自分に合う治療を探している方も、自費診療を検討できるでしょう。

なお、自費診療の費用は全額自己負担となりますので、治療を開始する前に医師とよく相談し、確認することが大切です。

副作用が見られることがある

テストステロン補充療法を実施することで、肝機能障害や脂質代謝異常などに発展するリスクがあります。また、ニキビや女性化乳房、気分の変調などが見られるケースもあります。

不調が見られたときはすぐに医師に相談するのはもちろんのこと、治療中は定期的にクリニックを受診して、体調やテストステロンの数値などをチェックしてもらうことが大切です。

効果を得られないこともある

テストステロン補充療法を受けた結果、期待するような効果を得られない可能性もあります。

また、効果を得られる場合も、すぐに実感できるとは限りません。1回で実感できる方もいれば、数ヶ月継続することで実感できる方もいます。

テストステロン補充療法(男性ホルモン注射)に対応するクリニックの選び方

テストステロン補充療法を実施しているクリニックは少なくありません。どのクリニックにするか迷ったときは、次のポイントに注目してみてください。

  • 丁寧なカウンセリングを実施しているか
  • 治療開始前に検査・診察を実施するか
  • 治療薬の種類に選択肢があるか
  • 通いやすいか
  • 予約を取りやすいか

各ポイントを解説します。

丁寧なカウンセリングを実施しているか

不安を解消してから治療を開始するためにも、丁寧にカウンセリングを実施するクリニックを選ぶことが大切です。テストステロン補充療法は、単に体内のテストステロンを増やせばよいのではありません。副作用のリスクも考慮しつつ、患者様に合った方法で治療を進める必要があります。

また、テストステロン補充療法は何度か繰り返して実施することが一般的です。丁寧にカウンセリングを実施するクリニックなら、医師とのコミュニケーションがしっかりと取れるため、患者様の希望や体調を反映したきめ細かな対応が可能です。

治療開始前に検査・診察を実施するか

丁寧に検査・診察を実施してから、テストステロン補充療法を開始することも大切なポイントです。テストステロン補充療法に注力しているクリニックなら、より詳しい検査・診察を実施すると考えられます。

また、治療中も定期的に血液検査などを実施するかどうかもチェックしておきましょう。不調にいち早く対応できるだけでなく、副作用を回避しやすくなります。

治療薬の種類に選択肢があるか

治療薬の種類に選択肢があるかどうかも、クリニック選びのポイントとなります。例えば、市販の頭痛薬でも、有効成分は同じでもよく効くように感じるものもあれば、あまり痛みを軽減できないものもあります。

テストステロン補充療法も同じです。有効成分は同じであっても合う合わないがあるため、複数の種類に対応していると、より患者様に合う治療薬が見つかりやすくなります。また、注射薬だけでなく内服薬や外用薬の処方も可能なら、さらに治療の選択肢が広がります。

通いやすいか

テストステロン補充療法では、治療を何度か実施することが一般的です。通いやすい立地のクリニックなら、通院の負担が少なく、治療を継続しやすいでしょう。また、副作用や不調が生じたときも、通いやすいクリニックならすぐに相談できます。

予約を取りやすいか

予約の取りやすさもチェックしておきましょう。電話がなかなかつながらないといったクリニックでは、通院が難しくなります。オンライン予約に対応しているクリニックなら、時間を問わず予約の申し込みが可能です。

納得できるまで相談してから治療を始めよう

テストステロン補充療法により、疲労感や筋力低下、性欲減退といった男性ホルモンの減少が引き起こす不調の改善が期待できることがあります。クリニックを受診し、医師に相談してみることも検討してみましょう。

テストステロン補充療法に関する疑問は、to clinic shibuya(トゥークリニックシブヤ)にご相談ください。医師が丁寧なカウンセリングを行い、副作用のリスクを考慮しつつ、患者さんのニーズに沿った形でエビデンスに基づいた治療計画を提案します。また、治療中も問診や検査を通して計画を見直し、二人三脚で治療を進めていきます。ご不明な点があれば、お気軽にお尋ねください。

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